みなさんこんにちは。今回は自己免疫性胃炎についてお話ししたいと思います。
前回はH.pylori (ヘリコバクター・ピロリ菌)感染時に見られる内視鏡所見の1つとして、萎縮性胃炎があるとお話ししました。今回の自己免疫性胃炎も、萎縮性胃炎の原因となる疾患の1つになります。
自己免疫性胃炎は、抗胃壁細胞抗体や抗内因子抗体などの自己抗体(本来は細菌などに対して免疫をつかさどる体の中の抗体が、自分自身を誤って攻撃してしまうもの)が関与しており、自己免疫機序(異物を認識し排除するための役割をもつ免疫系が、自分自身の細胞や組織に対して反応し攻撃を加えてしまう現象)により胃粘膜の萎縮(胃の粘膜に炎症が起こることで、胃液や胃酸などを分泌する組織が縮小し、胃の粘膜が薄くなる状態)を引き起こします。
前回お話ししたH.pylori感染時の萎縮性胃炎の典型例は、胃の出口付近の前庭部から萎縮が始まり、胃の真ん中の胃体部に広がっていきます。一方で、今回の自己免疫性胃炎の典型例では、胃の真ん中の胃体部を中心とした萎縮性胃炎で、胃の出口付近の前庭部には萎縮を認めないか軽度であり、H.pylori感染時の萎縮性胃炎の所見とは内視鏡像が異なります。
上の写真が自己免疫性胃炎の所見ですが、左側が前庭部、右側が体部の写真になります。胃体部(右側)では血管透見像が著明で高度の萎縮所見が見られますが、前庭部(左側)には萎縮所見を認めず、「逆萎縮」の所見を認めます。
自己免疫性胃炎は自覚症状に乏しいことも多いですが、長期にわたり罹患していると、胃酸分泌低下に伴う鉄欠乏性貧血や、内因子低下に伴う貧血を認めるようになります。また胃癌や胃神経内分泌腫瘍や他部位の悪性腫瘍の発生率が高いことが知られています。
有病率は決して高くありませんが、心配という方は、是非一度ご相談ください。お待ちしております。